モンブラン

モンブランのスターウォーカーの評価には限定版ボールペンが必要

スターウォーカーの限定版

モンブランのスターウォーカーは、大変に使いやすいボールペンです。

最近はモンブランのマイスターシュテュックよりも、スターウォーカーを使っている人の方が多くなった気がします。

私自身も常にYシャツの胸ポケットに刺しているのはマイスターシュテュックですが、使用時間が最も長いのはスターウォーカーです。

販売当初から上着のポケットなどに入れて持ち歩き、日常的なメモにはスターウォーカーを使って来ました。

(そのせいかシグノ替芯を油性ボールペン軸に装着する試験の第一号も、スターウォーカーだったりします)

しかし、どうしてそんなに使いやすいのかという点に関しては、今まで明確に説明することが出来ませんでした。

それが興味本位で購入したスターウォーカー限定版のレッドメタルと悪戦苦闘することによって、ようやくその価値や使い方が分かって来ました。

そこで今回はモンブランのスターウォーカーという高級ボールペンの長所や短所を、徹底的にレポートさせて頂くことにします。

スターウォーカーとは

モンブランで最も歴史と権威のあるボールペンと言えば、マイスターシュテュックになります。最近では大型軸のル・グランや、小型軸のモーツァルトなども販売されています。

今も私のYシャツの胸ポケットに刺さっているのは、30年ほど前に「西ドイツ」で製造されたマイスターシュテュックです。

一方でスターウォーカーを使い始めたのは、販売開始された2003年のことです。2002年から営業支援業務を担当するようになり、顧客訪問する機会が増えました。そこでロスATXを購入してみたものの、インク溜まりに悩まされていました。

しかしそんな時にモンブランのボールペンを使ってみて、インク溜まりが起こらないことに驚きました。ボールペン軸の価格も10倍以上の差が存在し、「これが本当の高級ボールペンというものか。」と、妙なところに感心したものです。

ちょうどライバル企業のトップ営業さんが雑誌で紹介され、彼もスターウォーカーを使っていました。そんなこともあって、なんと2007年にはモンブランそごう横浜店を訪問し、大胆にもスターウォーカーのモンブラン100周年記念モデルを購入しました。

ちなみに標準品も100周年記念モデルも、ボールペンとしての基本的なスペックは共通です。違いはホワイトスターなのか、それともダイヤモンドなのかという程度です。

  • 全長:約138mm (収納時)
  • 全長:約141mm (筆記時)
  • 胴軸径:約13mm
  • 最大径:約16mm (クリップ含む)
  • 重さ:約30g

したがった重さも同じでした。約30gなので、ちょうどマイスターシュテュック149万年筆と同程度です。

むしろ特徴的なのは、限定モデルのレッドメタルです。同じく限定モデルのラバーメタルと同じく金属製のため、なんと45gという重さです。

デザインはいずれも共通であり、初期型特有でペン先側が太くなっています。これは2019年にモデルチェンジされた最新型にも共通しています。

ただし初期型標準モデルもレッドメタルも、太くなった部分に三重環が存在します。この点は最新型と異なっています。

ともかくスターウォーカーはモンブランが時代に合わせて投入した太軸タイプのボールペンであり、たしかにペン先をコントールしやすいです。誰もが口を揃えて賞賛するのも、「なるほど」と頷けてしまいます。

レッドメタルでの苦労

さてそんな感じで、今までずっと「何となく」スターウォーカーを使い続けて来ました。

しかし45gのレッドメタルは、そんなに簡単な代物ではありませんでした。

まず微妙なところが標準品と異なっているようで、例えば前軸と後軸のネジが逆になっています。ジェットストリームの0.28mm(つまりプラスチック芯)を装着するのにも、替芯のペン先側のプラスチックを削る必要があります。

てっきり限定モデルというのは標準品の目先だけを変えるような「お手軽品」と思い込んでいましたけど、どうやら誤りだったようです。金属軸で性能を出せるように、細かい部分を作り直しています。

同じなのは、見た目だけです。(まあ、デザインが同じなので、重さが同じならば使い心地は共通です)

ともかくレッドメタルは45gです。これによって元万年筆族だった私のボロが出ました。

モンブランの純正芯であるジャイアントリフィルを使っている時は、特に問題ありません。しかしジェットストリーム替芯を使おうとすると、ペン先をコントロールできないのです。

重さのせいか、ペン先のボールがツルツルと滑ってしまうような感覚です。そうかと言って、滑らない0.28mm替芯を装着すると、今度は引っかかり過ぎるのです。

もともと調子が良い時には、前軸と後軸の接合部分を持って、斜め50度くらいで筆記することもありました。しかしレッドメタルでは、こんな芸当は出来ません。

地味にボールペンのペン先側を持つように心掛けても、使い心地は今一つでした。そしてインクを切り札のシグノ307にしても、今一つ滑る感覚があってNGでした。

お察しの通りで、このスターウォーカーのレッドメタルは、私の前のオーナーが存在します。その方もこの「高級ボールペン」を、事務用として酷使していたみたいです。

傷だらけのスターウォーカー

どうやら黒ラッカーと14金張で塗装されているのですけど、あちこちで筋が乱れています。ペンケースに入れて持ち歩いていたら、決してこのような状態にはなりません。

私の使い方も相当乱雑ですけれども、同レベル以上のようです。ともかく、このような傷は日頃から “マイ筆記具” として使っていた証でしょう。

一体どうしてそんなに快適に使えていたのか、謎は深まるばかりでした。

救世主シグノ207

そんな私に、嬉しいことに救世主が登場しました。それが水性インク(ゲルインク)の ”シグノ207” です。ジェットストリーム替芯で最小ボール径の0.28mmと同じく、ボール径0.28mmの顔料インク替芯です。

さすがに水性インクの方が油性インクよりもインクフローが豊かです。ジェットストリームの0.28mmは “カリカリ感” で使えませんでしたけど、このシグノ207の0.28mmは丁度良いインクフローでした。

おまけに幸か不幸か、自宅でレッドメタルを使う機会がありました。寒いのでジャンパーを着ていた私は、自然と腕が上がり、スターウォーカーの角度が少しだけ垂直に近づいたのでした。

ご存知のように、ボールペンは “ボール” を転がしてインクを残す原理であり、最も効果的にインクが紙面に残るのが60-90度の間です。

期せずして、元万年筆族でさえ「ボールペンを使いやすい角度」で紙面に書き込みできる状態になりました。

… それは本当に快適な時間でした。

0.28mmを使っていたのは、小さな文字を書くためです。つまりペン先の動きは少ないです。45gと重いボールペンでも、スターウォーカーの紡錘形のペン先はキッチリとホールドできます。

そしてインクは、インクフローの豊富な水性インク(ゲルインク)です。抵抗が小さいので、サラサラと書くことが出来ます。

重いボールペンは長時間利用に適さない」というコメントを見かけたことがありますけど、その方は一体どのような使い方をしたのででしょうか。

私の場合は、「スーパー快適」でした。

あまりに快適なので、3時間以上も机に座ったまま、仕事を続けてしまいました。

いやいや、なかなか「重いボールペン」というのも良いものです。20gのアウロラのイプシロンで、ジェットストリームの0.28mmを使うのも快適で良いです。

一方で45gのスターウォーカーで、プロジェクトペーパーにチマチマと書き込んでいくのも大変楽しいです。

そう、相手は冒頭画像でお分かりのように “プロジェクトペーパー” です。私が知る限りで、ジェットストリームの0.28mmとは最も相性の良くない紙です。

それを1枚だけ取り出し、机上を保護するプラスチックシートの上で書き込んでいくのです。”コツコツ” といったような感覚が、なんとなく自分の思考を次の段階へと進めてくれるような錯覚にとらわれる程でした。

まとめ

モンブランのスターウォーカーのレッドメタル、さすがにスターウォーカーだけあって、正しい角度で書き込めば超快適に利用できました。

前の持ち主が、ボロボロになるように酷使したのも、今では良く理解できます。やっぱりスターウォーカーは快適です。

おまけにジャンパーを着た状態の筆記角度だと、モンブランの純正芯も一層快適に使えることが分かりました。

40gを超えるような重量級ボールペンに関しては、やれ「普通の高級ボールペンよりも高級感が出る」とか、「長時間利用には向かない」とか、いろいろなコメントが寄せられています。

しかしお気に入りのボールペンとして勤労意欲を増してくれる効果は確かに存在するものの、高級感だとか長時間利用に関しては、根拠が無いことが分かりました。

また元万年筆族の弱点である筆記角度に関しても、テニスなどのスポーツで使われているリストバンドが有効だと分かりました。

100周年記念モデルのスターウォーカーにはジェットストリームの0.28mmを装着していますけど、会社の机はサテンというかデコボコした表面なので、油性インクの0.28mmだと「砂利道を走る自動車」みたいです。

このような状況では、レッドメタルのシグノ207の方が快適です。

興味本位で手を出してしまったスターウォーカーのレッドメタル限定モデルですが、無駄な買い物にならずにホッと一安心といったところです。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:四葉静