今回は最も難易度の高い、アベンチュラのようなクロス油性ボールペンの替芯や互換芯の話です。
まず最初に断っておくと、残念ながら適当な互換芯は1本しか存在しません。
幾つかのメーカーがクロスの互換芯を製作していますが、どこもクロスの純正芯と比べると今一つです。
品質的に今一つだけれども価格的にリーズナブルなのが、三菱鉛筆のSK-8という互換芯です。
こちらにしても最近はクロス純正芯が品質/価格的に向上しており、大満足とはいえない状況です。
そこで今回は無理やり「大満足」を導くための方法である “加工” を紹介させて頂くことにします。
純正芯や互換芯
実はクロスの純正芯に悩まされた方は、相当いらっしゃるのではないでしょうか。
もう20年くらい前に本格的にクロスの油性ボールペンを使おうとした際、私は壁にぶつかりました。
書き心地は悪くないのですけれども、ともかく “ダマ” が生じるのです。単なるメモなので致命的ということはありませんでしたけど、あまり愉快なことではありませんでした。
その時は我慢できなくてモンブランへ転向しましたけど、さすがにモンブランでは “ダマ” が生じるようなことは無かったです。それで今まで、ずっとモンブランを使い続けている訳です。
ところで実はこれ、最近になってクロスが悪いとは言い切れないことが分かりました。強いて言えば、私の使い方が良くなかったのです。
三菱鉛筆のお客様相談室によると、下記のような場合に「ペンの先にインクが溜まる」ことが起こりやすいのだそうです。
- 筆圧が弱い場合 や 筆記する紙が薄い場合
- 直線を引く場合
- ペンを寝かせて書く場合
- ゆっくりと筆記する場合
… はい、私は筆圧が弱いです。そして鉛筆から万年筆を経てボールペンへ至ったので、ペンを寝かせて書く習慣が身に付いています。だから20年前のクロスの純正芯では、”ダマ” が生じていたのですね。
ちなみに冒頭で紹介した三菱鉛筆のSK-8ですが、こちらはそんなに “ダマ” は生じませんでした。しかし万年筆で筆圧をかけない習慣が身に付いているせいか、今一つ書き心地が固かったです。(それでモンブランへ移行しました)
なお今ではインターネットが普及して、SK-8以外の互換芯を海外から取り寄せることが可能です。しかし「安かろう悪かろう」で、相変わらず “ダマ” が生じたり、急に書けなくなることがあります。
ちなみに米国ではクロスの純正芯は2本セット版が売られていて、相当リーズナブルなお値段になっています。これを輸入して転売する業者も存在するくらいで、できればAmazon Japanが扱ってくれると嬉しい今日この頃です。
替芯の加工
さてクロスの純正芯にも互換芯にも頼れない場合、自ら互換芯を自作するという方法が考えられます。
(最初に結論をいっておくと、おすすめしない方法です。これから紹介するように、自作は十分に可能ですけど)
残念ながら4c芯が理想的な形状ですが、画像でお分かりのように純正芯のペン先は細いです。そこでヤスリを利用して、画像一番上の替芯(リフィル)のように、ペン先が細くなるように加工してしまうのです。
もちろん芯の長さが足りないので、そこは冒頭画像のように「プラスチック芯をつなぎ合わせる」ことによって補います。これで自作の「互換芯」が出来上がります。
少しずつ芯を回転ながら、棒状のヤスリは弧を描くように動かします。そして無事にペン先の口金を通過できるようになるまで、適当に削っては通過可能になったかを確認する作業を繰り返します。
人間というのは良く出来た工作機械のようであり、ともかくやってみると許容範囲内で丸く削ることが出来ることが分かります。
ただしこの方法、他にも実践した人がいるのですけれどもオススメできません。理由は人間が手作業でやっていると、時間がかかり過ぎるのです。
これが画像のようにタンク式の替芯(リフィル)であれば、インクの量が多いです。つまり滅多に必要とならない作業だから、挑戦しても良いでしょう。しかし4c芯はインクの量が少なく、そもそもインクフローさえ心配になってしまう程です。
そこで私としては自己責任になってしまいますけど、どうしても加工に挑戦するならば、ボールペン本体(ペン先の口金部分)を加工する方法をおすすめしたいです。
本体の加工
世の中には高い技術を持った人々が存在します。ネジ部分が折れても、そのネジを製造して埋め込んでしまうような筆記具修理やさんも存在します。
そういう人たちから見れば児戯となってしまうけれども、コツコツとヤスリで口金の穴を拡張する方法があります。
どのボールペンでも、口金の先端部分は肉厚が薄くなっています。だから基本的にはペン先の口金を外して、後ろ側から拡張することがオススメです。
画像で説明すると、下側のパターンです。ただし口金の金属を外す自信のない場合は、画像上側のように先端側から加工することも可能です。
ちなみに私は滑り止めにセロテープを巻きつけ、口金部分の金属を手で回して外しています。それが出来ない時は、面倒なので先端側から加工してしまいます。
このようにペン先の口金を “拡張” すれば、4c芯が利用可能となります。ジェットストームの場合には、プラスチック芯も利用可能になります。
ただし冒頭画像のように、クラシックセンチュリーの場合にはペン先のプラスチックを削る必要があります。ATXの場合には、そんなことをしなくても全然オッケーです。
そういえば口金の加工時間も、クロスのボールペンの種類によって大きく異なります。今まで経験した10数種類のクロス全てで大丈夫でしたけれども、例えばアベンチュラは30分近くも作業しました。
30分近くも、クルクルとヤスリを回しては、適当な時に通過テストをやるのです。退屈するので、私はドラマを観ながら作業していたりします。
まあ時間がかかることもありますけど、作業は一度で済みます。あとはインクが切れたら、用意しておいたスペア芯に交換すればOKです。なおプラスチック芯だとインク切れが一目で分かります。
インクフローやコスパといった点を除いても、多くの人が使用しているプラスチック芯は便利です。どのような替芯が存在するかは、興味があれば下記記事をご覧ください。
まとめ
クロスの油性ボールペンは、適当な互換芯はSK-8くらいです。しかし今回のようにペン先を加工することによって、いろいろな替芯(リフィル)を利用できるようになります。
最近では三菱鉛筆ジェットストリームのような低粘度油性インクだけでなく、ゲルインクのシグノやジェルインクのSARASAやHITEC-Cといった水性インクも利用できます。
こういったインクでクラシックセンチュリーのスターリングシルバーのようなボールペンを使っていると、まるで鉛筆や万年筆を使っているような感覚になることもあります。
唯一の問題は、これだけ快適だとカラーや太さをいろいろと試したくなって、いろいろなクラシックセンチュリーのボールペンを購入してしまうことでしょうか。
そういえば私は義父と実父から、ベーシックモデルのクラシックセンチュリー・クロームを譲られています。あなたが興味があったら、身近な人に “加工” をネタに雑談してみるのも1つかもしれませんね。
(私の場合は、見たこともないクロスのボールペンを譲られました)
それでは今日は、この辺で。ではまた。
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記事作成:四葉静