高級筆記具というと大層なモノ言いになってしまいますが、それらも筆記具の一分野に過ぎません。
つまり替芯が必要であり、その規格や形状は筆記具メーカーによって異なる可能性があるということです。インク自体も替芯カバーも技術革新が進む現在では、仕方ないことかもしれません。
しかし少しの工夫で無事に使えるようになるのであれば、何もせずに諦めるのも勿体ない話です。
そこで今回は、百均などからも手軽に調達できて、お値段的にも財布にやさしい水性インク替芯の加工方法を紹介させて頂くことにします。
加工が楽なタイプ
私たちが当たり前のように使っているノック式水性ボールペンですけれども、実は地道に工夫が進んでいます。いまのところ最も加工が容易なのが、文房具店や書店で販売されているSARASA CLIPです。
水性ボールペンの替芯にはJF0.4と書いてあります。今日時点では、私はこの替芯を高級筆記具の王様とも呼ばれるモンブラン・マイスターシュテュックに装着しています。
どうして加工が楽なのかというと、上記の画像から分かるように、ペン先部分のプラスチックをインクタンクの本体に深く埋め込むタイプだからです。だから削ってもペン先が外れるようなリスク(危険性)が小さいです。
逆にリスクが大きいのは、下記の画像のように、昔ながらのフタみたいに埋め込むタイプです。良く見ると水性インクのタンク内部に1mmくらいの段差があるらしいことが分かります。
このようになっていると、プラスチック芯の外側を削るとペン先プラスチック部分が露出してしまいます。つまりペン先部分がグラつきやすくなり、ひどい時にはアッサリと外れてしまいます。
したがってこのように段差のある水性ボールペンの替芯は、どう頑張ってもモンブランのマイスターシュテュックのように「本体内部に余裕がないために替芯を削りまくることが必要」な高級筆記具には適用できません。
それではどうして昔ながらの水性ボールペンの替芯が導入したかというと、「インクの量を増やせる」という利点がある為です。こちらの画像でお分かりになりますでしょうか。
右側が昔から存在していたタイプで、左側が先日購入したSARASA CLIP水性ボールペンに装着されていた替芯です。プラスチックの肉厚が厚くなっており、従来タイプよりも貯蔵インク量が少ないことが分かります。
ただしこのように肉厚が厚いため、逆にペン先のプラスチックは差し込むだけで十分に安定します。だから従来式のような段差が必要なくなり、高級ボールペンへの装着用に加工しやすくなっているという訳です。
こうやって確認してみると筆記具メーカーもインクだけでなく、替芯の製造方法も工夫していることが分かります。そして私の自宅近所の書店にある替芯コーナーでは従来式の替芯が販売されているのは、もしかすると会社事務職のようなヘビーユーザーには周知の事実で、従来式の替芯を購入希望する方々多いためかもしれません。
加工方法
さてジャンボ芯を装着したノック式水性ボールペンの替芯を高級ボールペン向けに加工する方法です。これは筆記具メーカーというかボールペン本体によって仕様が異なるので、こまかい部分は対象ボールペン用に工夫して頂くことが望ましいです。
ただし基本原則とも言えるのが、下記項目となります。
- 後端側から加工開始
- タンクの表面を削るのは早い段階で
- ペン先のプラスチックを最初に加工
- ペン先からタンク方向に削ると楽
- ペン先が終わったらタンク本体
- タンク側は最低限の加工に留める
(1) 後端側から加工開始
ファーバーカステルの伯爵コレクションなどに多いのですが、後端の形状を厳密に規定している筆記具メーカーが存在します。特に問題となるのは、後端部分の太さです。そこで加工で強度が低下する前に、影響度の小さい後端側を加工してしまいます。
(2) タンクの表面を削るのは早い段階で
同じくファーバーカステルの伯爵コレクションなどに多いのですが、ボールペン内部の空間に余裕がない場合は、替芯本体の周囲を削り取ります。滅多にやらない作業とはいえ、出来ればこのような単調作業で貴重な時間を失いたくはないです。
私は外側を削るくらいならば、4c芯や細いプラスチック芯を使うことを好みます。それから先ほどの画像から分かるように、肉厚の薄いプラスチック芯だと「削る余裕」が少ししかありません。
だから技術的には可能ですけども、ファーバーカステルの伯爵コレクション(標準的な細い本体軸)には、あまり水性ボールペンの替芯を装着したくなかったりします。あれはペン先の口金も長いので、先端側の加工作業も大変です。
そうはいっても挑戦したいという方を引き留めるつもりはありませんけど、もし装着したいのであれば早めに作業してしまうことをオススメしています。理由は後端側を最初に実施するのと同様、ペン先部分が強度低下した状態での加工作業は、極力控えたいからです。
(3) ペン先のプラスチックを最初に加工
周辺作業が終わったら、いよいよ重要部分の加工作業を始めます。その手始めが、このペン先のプラスチックを削る作業です。クロスのローラーボールやモンブランのマイスターシュテュックの本体軸などは、さすがに高級筆記具だけあって純正芯が丁度良く収納できるように造られています。
あせらず慎重に削って行きます。またこの後で水性インクを貯蔵しているタンク部分を加工すると、強度的に取り付けが弱くなることがあります。基本的に「この後でペン先のプラスチックを削ることはできない」と想定して頂くのが良いです。
(4) ペン先からタンク方向に削ると楽
ところで加工する時に工具を動かす方向ですが、ペン先からタンク方向に動かしていくのが楽で良いです。
私が今まで扱った水性ボールペンの替芯は、ペン先の金属はプラスチックと接する部分で段差になっていました。だからこの金属の太さと同じになるように削るのです。
なかなか心臓がドキドキする作業です。だから先程コメントしたように、少しずつ削って様子を見るのです。ちなみに加工する替芯ですけど、慣れないうちはペン先のプラスチックが白いと助かるでしょう。インクが視認しやすいので、安心できます。
もちろんモンブランのローラーボール・ボールペンのように、このような作業が必要ない高級ボールペンも多いです。なかなか判断が難しいですけれども、これは実際に装着を試みたり、純正芯の形状を参考に判断するのが良いです。
(5) ペン先が終わったらタンク本体
水性ボールペンのプラスチック替芯を加工する作業で、最も重要なのがタンク本体の加工です。これも一度に削り取るのではなく、角張ったところから少しずつ作業するのが良いです。
高級ボールペンの本体軸によっては、かなり際どいところまで「攻める(削る)」必要があります。替芯の種類によっては、どう頑張っても無理な場合があります。
たとえばこのシグノのジャンボ替芯は、先ほどのSARASA CLIPのように削ることが出来ません。モンブランのスターウォーカー(初代)、ジェネレーション、ファーバーカステルのイントゥイション等は装着可能ですが、現在販売中のマイスターシュテュックやPIXシリーズには装着できません。
ちなみにこの画像の替芯は、本当にペン先が外れるギリギリまで攻めています。いや実をいうと、攻めすぎて少しインクが漏れかけました。(^^;)
幸い私は黒マニキュアを保有していたので、削り過ぎた部分をマニキュアによって封じるような感じで処置しました。しかし果たしていつかインクフローが悪くなったりしないか、ハラハラドキドキしています。
そういう意味でも特に初心者のうちは、SARASA CLIPのペン先が白いプラスチック芯が楽で良いです。あまりコストや「シグノ」ばかり追いかけ過ぎて、無駄作業をしないように注意しましょう。
(そうはいってもシグノは魅力的で、私も加工しやすい替芯を探したり、今も試行錯誤を続けています)
まとめ
以上が水性ボールペンのジャンボ替芯を高級筆記具へ装着する場合の加工方法でした。
しかしこうやって作業してみると分かって来るのですけど、高級なボールペンほど快適に利用できるように工夫されています。お手頃価格の水性ボールペンの替芯は快適ですけど、コストだけが悩みであるならば、生活費を工夫して純正芯を使い続けるという選択肢も悪くないです。
それからこういった作業には、失敗はつきものです。最初の数本は犠牲にするくらいの覚悟で、汚れても構わない「作業服」を用意するのが良いかもしれません。
それではあなたの筆記具ライフが少しでも快適になることを期待して、今回はこの辺で。
ではまた。
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記事作成:四葉静