ボールペン一般

[30年後の姿] 一生使えるボールペンの現在

一生使えるボールペンとは、誰もが憧れるでしょう。

今回は「一生使えるボールペン」を使う意味、保管方法や使用上の注意、幾つかのオススメなどを紹介することことにします。

まあ固い話はさておき、オシャレな高級ボールペンをずっと大切に使っている人って、なんか好感が持てますよね。

でも筆記具である限りは故障などは起こる訳で、アフターケアしてくれる職人さんたちの存在が欠かせません。

そうやって実際に何十年も使用されて来たボールペンの継承者として、自分の周囲の方々の例も含めて高級ボールペンについて解説することにします。

ちなみに「そんなことよりも高級ボールペンのオススメを教えて欲しい」という方は、こちらの記事をオススメします。

[2020年版] 高級ボールペンのオススメ・トップ10現在の我が家には主要ボールペンが殆ど全て揃っている状況です。 凝り性な技術屋が、数十年も手帳と筆記具と一緒に暮らして来た訳です。筆...

一生使うのが大切な訳

あなたはどうして「一生使えるボールペン」に拘るのでしょうか。

高級ボールペンに良くある「艶やかで高価そうに見えるボールペン軸」だけに憧れているならば、別に「一生使えるボールペン」など必要ありませんよね?

百均へ行けば、高級ボールペンとそっくりに見えるボールペンが販売されています。文房具店へ行けば、予算が1,000円くらいあれば、お客さんとの打ち合わせの席でも使える「見栄え良いボールペン」を購入できます。

私の知り合いの大学教授は、しばしば何かに没頭してボールペンを置き忘れる達人で、1,000円以上のボールペンを持ち歩くことは決してしないとのことです。

そして大学の研究室へ会いに行く時は、誰かに見られて注目されても良いことは全くないので、モンブランのホワイトスターは見えないようにしてくれと注文を付けて来ます。

それで私のモンブランのボールペンの数本は、ホワイトスターが黒マニキュアで塗り潰されています。私もモンブランのホワイトスターは仰々しくて趣味ではないので、むしろ喜んでホワイトスターを隠しています。

(ホワイトスターさえなければ、百均のボールペンと区別することは困難になります)

私の友人や一緒に仕事する仲間は、別に高級ボールペンを持っているだけでは、注目も尊敬もしません。「一生使えるような高級ボールペン」を使っていることに、全く価値はないと思っているからです。

でも何十年も同じボールペンを使い続けている者には、それなりの敬意を払います。

私もドイツが統一される前の西ドイツ時代に製作されたモンブランを持っていることは、ささやかな自慢だったりします。皆も敬意ではないと思いますけど、興味は示してくれます。

西ドイツ製マイスターシュテュック

某氏が購入なさったマイスターシュテュックのような、「うっとりするような美しさ」なんて、カケラもありません。

そこにあるのは、30年間の酷使の末、無数の傷で輝きを失ったボールペン軸です。何度も替芯が出し入れされた為なのか、当時のドイツ情勢を反映してなのか、口金の部分は純正芯(ジャイアントリフィル)とぶつかってカタカタと音を立てます。

替芯を出し入れするツイスト(回転)機構も緩くなっていたので、乱暴にも眼鏡用ネジ止め剤で調整しました。替芯は交換するたびに、セロテープの切れ端などで音を立てなくするように調整する必要があります。

これが私の自慢のボールペンです。もともとの持ち主は私ではなく、10年くらい前に譲られたものです。その時から、こんな調子でした。

しかしこんなの、まだ序の口です。お嬢様の学校の保護者会でお会いしたママさんは、1mmくらいあるんじゃないかという傷が幾つもあるマイスターシュテュックを使っていました。

親同士で意見交換した内容をメモして提出する際、彼女は “スッ” と胸のあたりから自然にマイスターシュテュックを取り出しました。そしてサラサラと、皆のコメントを配布用紙に書き込んでいました。

何かこう、「カッコいい」というのが精一杯の説明になるでしょうか。実にサマになっていました。

ちなみに彼女のマイスターシュテュックは、口金もツイスト機構も全く大丈夫のようでした。おそらく、モンブラン(おそらく場所的にモンブラン横浜そごう店)で修理して貰ったのでしょう。

さてこれで、私から見た「一生使えるボールペン」というものが、一体どんなものかお分かり頂けたでしょうか。

一生ものだと誇れる「一生使えるボールペン」というのは、単に高品質な部品と職人さんによって製作された高級で長持ちするボールペンというだけでは不十分です。

それこそ自分の体の一部のように使うのだから、破損や故障することもあります。それを何十年にも渡って、しっかりとアフターサポートしてくれる体制(部品や職人さん)が確立されていることが、「一生使えるボールペン」には必要なのです。

「いやいや、私はともかくこの高級ボールペンが気に入っているのです。でもモンブランのような対応は期待できないし、悩ましいです」とおっしゃる方もいます。

私はそんな方には、同じボールペンを数本購入しておくというアイディアを紹介しています。そうすればツイスト機構などは、筆記具専門店経由で職人さんに部品交換して貰えることがあります。だから筆記具メーカーが修理部品のストックを使い切ってしまったような場合でも、復活させることが可能です。

ちなみにマイスターシュテュックは細部で改善が施されているものの、デザインや内部構造は30年前から変更されていません。だから今でも修理部品には問題がなく、彼女のように数十年も使い続けることが可能なのです。

当たり前のこととしてご存知かもしれませんけど、こういう過去の実績があるからこそ「一生使えるボールペン」というものは憧れの対象となるのです。

一生使える取扱方法

筆記具である限り、ぶつかったり、落としたりして傷つくことがあります。それどころか、うっかり置き忘れて紛失してしまうことだってあります。

カルティエのディアボロという高級ボールペンを使っているマダムは、筆記具ケースにノートと一緒に収納しています。先日お会いした営業さんの場合は、モンブランのマイスターシュテュックをペンケースに収納していました。

こうやってケースに入れ、カバンに収納して持ち歩けば衝突や落下、そして紛失のリスクは限りなく小さくなります。当たり前といえば、当たり前でしょうか。

万年筆の場合だと、自宅から持ち出さないという方も存在します。(私のお袋さんは、百均のボールペンしか持ち歩きません)

これらが一生使える取扱方法です。

でもペンケースに収納していたのでは、いざという時に “スッ” と取り出して使うことが出来ません。やっぱりYシャツの胸ポケットに、常に用意しておきたいです。

そんな私は、少しばかり邪道な方法を採用しています。

それは「2本目を持ち歩く」という方法です。いざという時のために「一生もののボールペン」は極力使わず、普段は2本目を使うのです。

若干どちらが「一生もののボールペン」なのか分からなくなって来ますが、西部劇のガンマンに喩えるならば “二丁拳銃” です。

それどころか持参するのを忘れた場合に備えて、カバンに3本目を収納しておくというパターンもあります。

これが度を過ぎると「会社の引き出しにも常備」といった事態になり、さらに赤や緑のインクも使いたいとなると、多数のボールペン軸が必要となります。

実は私は何十本ものボールペンにも及ぶ収集家となってしまいましたけど、仕事場が三か所あるために増殖してしまったと言い訳することもできます。(無理?)

かなり本末転倒になりますけど、「一生使い続ける」ためには、「出来るだけ使わない」ことが最も効果的だったりします。

一生使える保管方法

ちょっと厄介なのが、保管方法です。

金属メッキが変色しないようにするためには、汚れが付いていない状態で保管することが大切です。

これはなかなか大変なことです。それに筆記具は、筆記するための道具です。道具は使ってこそ「ナンボ」です。

私が数十本のボールペンを、数十年に渡って良好な状態に保つことが出来ているのは、「定期的に使用している」からです。

これがボールペンの強みでしょうか。万年筆だとタンク洗浄などの問題がありますけど、ボールペンでは替芯を使い切ったら、あまり使わないボールペン軸の替芯を使えば良いのです。

そしてあまり使わないボールペン軸には、新たに購入した替芯を装着するのです。ボールペンのインクも経年劣化から完全に免れることは出来ないので、古いインクの替芯から使っていくのが効果的です。

こういう手軽な保管方法を採用できるのが、ボールペンの嬉しいところでしょうか。

下手すると私のように「筆記具の沼」にはまってしまうかもしれませんけど、”2本目” というのは結構有効なアプローチだったりします。

オススメのボールペン

さて「一生使えるボールペン」には、アフターサポート体制や造りのしっかりした高級ボールペンが適しています。しかし高級ボールペンの中には、「一生使えるボールペン」に不向きなタイプが存在します。

それが金属軸にラッカー塗装したボールペンです。

ラッカー塗装のボールペン

これはクロスのセンチュリー2ですけど、塗装状態が良くないボールペン軸で、落下時の状態や傷の場所のよっては “塗装ハゲ” を起こすことがあります。

これは一箇所で生じると、拡大していく傾向があります。別にクロスに限った話ではなく、ダンヒルのサイドカーというボールペンでも同様です。

ただし金属軸は重みが感じられるという魅力があるし、塗装だと奇麗に黒光りします。だから人気も高いのですが、日頃からポケットに収納して使うのには向いていません。

そういう意味では地味目になってしまいますけど、ボールペン軸の本体は樹脂製が無難です。

そういう目で見て、私のオススメとなるのは次の三本程度でしょうか。

(1) モンブランのマイスターシュテュック

もはや私が説明する必要がない程、定番中の定番です。

ちなみに最近ではスターウォーカーの方が頻繁に見かけられますけど、スターウォーカーは約30gの太軸ボールペンです。”スッ” と取り出して、”サッ” と使い始めるには今一つです。

見た目が地味で面白みがありませんけど、「一生使えるボールペン」としては当たり前である点にこそ価値があるのかもしれませんね。

(2) アウロラのタレンタム

これも見た目が、極めて地味です。地味で目立たないので演出を妨げないという観点なのか、TVドラマのリーガルハイでガッキー(新垣結衣)が愛用していました。

予算があって、趣味も合うようであれば、アウロラ主力筆記具のオプティマがオススメとなります。

私が知る中では、使い勝手という意味では、右に出るボールペン軸が存在しません。

(3) クロスのアベンチュラ

クロス ボールペン 油性 アベンチュラ AT0152-1 ブラック 正規輸入品
CROSS

クロスが入門用だと謳っているボールペン軸です。

超お手頃な価格だと侮ることは出来ません。造りはしっかりしたもので、ツイスト機構も標準品が採用されています。

唯一の悩みはAmazon Japanでは「純正芯2本セット」を販売しておらず、替芯代が気になる程度です。

しかし予備のボールペン軸を確保することも出来ますし、さすがは米国を代表する筆記具メーカーであるクロスの製品だと感心させられます。

まとめ

以上が「一生使えるボールペン」を使う意味、保管方法や使用上の注意、幾つかのオススメ軸でした。

いろいろな立場や考え方があるし、無理して「一生使えるボールペン」を選んで、我慢して使い続けることだけは避けた方が良いでしょう。

それよりは使っていて快適だと感じられることの方が大切です。

(「そうは言っても…」という気持ちも分かりますので、ホントに悩ましいですね)

ともかく本記事が、少しでもお役に立つことがあれば幸いです。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:四葉静