不思議に思ったことはありませんか?
誰もがモンブランのマイスターシュテュックが、高級ボールペンの最高峰だと言っています。
私は15年ほど使い続けて、ようやく初めてその理由を理解することが出来ました。
(そして気付けば、いつの間にか6本もある…)
実は理由は単純明快です。
最も多くの人にとって、最も快適に使えるボールペンがマイスターシュテュックなのです。
今回はどうしてそうなるのかを、実例も含めて徹底的に説明したいと思います。
ボディとインク
大袈裟な前置きをやってしまいましたけど、実は最高峰である理由は明確です。
ボールペン本体とインクが、高いレベルで絶妙なバランスを実現しているのです。
- 全長:約137mm (収納時)
- 全長:約140mm (筆記時)
- 胴軸径:約12mm
- 最大径:約16mm (クリップ含む)
- 重さ:約22g
こうやって書き出してみると、ごく当たり前のサイズと重量ボールペンです。コンビニや百円ショップで販売されているボールペンと、大きく異なる点はありません。
「高級ボールペンの重みが良い」という人がいますけど、22gでは大して重くありませんよね。
(気になったので、実際に台所の秤で確認してみました。たしかに22gでした)
同じモンブランのスターウォーカーのレッドメタルだと46gなので、半分以下の重さです。
一方で「黒い艶やかなボディが素晴らしい」という人がいますけど、近所の文房具店で購入した多色ボールペンと区別できません。
これ、本当に肉眼でも区別できないんですよ。モンブランのレジン樹脂の方が耐久性や強度が優れているのかもしれませんけど、少なくとも見た目は変わりません。
(さすがに耐久試験や強度試験でボールペンを犠牲にするのはご容赦っ!)
ただし実際に手に取ってみると分かりますけど、たしかに持ちやすいです。モンブランのマイスターシュテュックを参考に製作されているボールペンも多いです。
そして何より素晴らしいのが、殆どの全ての人が、このマイスターシュテュックだと「快適に書ける!」と感じる点です。
この理由の秘密は、ジャイアントリフィルと呼ばれる純正芯にあります。
マイスターシュテュックの重さに合わせたインクが配合され、ボールペン軸を寝かせ気味にしても大丈夫なようにボール部分が製造されています。
だから私のように元万年筆族がマイスターシュテュックを使っても、インク溜まりが生じないのです。
これは2000年頃の時点では、モンブランだけが実現していた特長でした。事務用ボールペンなんか、この頃はヒドいものでした。
この書き心地が良いという点と、インク溜まりが生じないというのが、私がモンブランを使い始めた理由です。
(その頃はバブル期だったので、替芯代も大して気になりませんでした)
そして書き心地という点ではスターウォーカーの方に軍配が上がるのですけど、ノーマルなスターウォーカーでも約30gです。そして太軸なのでYシャツの胸ポケットに入れると目立ちます。
この軽くて細くて身に付けやすいので、「いつでもどこでもすぐに使える」というのが、マイスターシュテュックの大きなアドバンテージだったりします。
ただし逆にいうと、ボールペン本来の使い方(60-90度での書き込み)をすれば、優位性は消え去ります。
だから必ず60度以上で書き込むことが必要なジェットストリームの0.28mmとは、マイスターシュテュックの相性は今一つです。
ハッキリ言ってしまえば、ジェットストリーム0.28mmを使う場合は、カルティエのディアボロ、アウロラのタレンタム、ファーバーカステルのイントゥイションなどの方が快適だったりします。
つまりあらゆるシチュエーションに柔軟に対応できる反面、ピンポイントな部分では突出して優れた部分が無いのです。
バランスの取れた優等生という喩えが、モンブランのマイスターシュテュックには似合っています。
最も印象的な一本
私が覚えている限りで最も印象的なマイスターシュテュックは、子供の保護者会でお会いしたママさんの “ゴールドクラシック” です。
クリップ、三重冠、ペン先の口金が黄金色(ゴールド)の、最もありふれた本体軸です。
それでも印象に残っているのは、私の30年もののマイスターシュテュックよりも、遥かにボロボロだったからです。
もしかしたら子供の頃から使い続けているのかもしれません。1mm程度の傷跡が残っている箇所が幾つもあったし、細かい傷で “輝きは皆無” でした。
それをグループディスカッションする時に、ごく自然にどこかから取り出し、”クリッ” とボールペン軸を回転させ、サラサラと記録用紙に書き込むのに使っていました。
誰もが躊躇する記録係を、嫌がる様子を全く見せずに引き受け、サラサラとボロボロのボールペンで書き込みをしていく。
その様子は、奥さんの付き添いとして後方待機していた私にも印象的でした。
それにしても、あれだけボロボロだったのに、動作には全く問題なかったのが印象的でした。おそらくメンテンナンスがしっかりとされているのでしょう。
30年前に製造された私のマイスターシュテュックですが、今でも最寄りのモンブラン横浜そごう店で持ち込めば、きちんとメンテナンスをして貰えます。
実は細かい改良が施されている一方で、各パーツは昔から互換性を維持して製作されています。だから修理部品にも、修理できる職人さんにも困りません。
このようなアフターケア体制がしっかりしているというのは、高級ボールペンの利用者としては嬉しい限りです。
「傷は男の勲章」という表現を聞いたことがありますし、もう10年近くずっとYシャツの胸ポケットに1年365日で控えています。そしてこの軸はネーム入りです。できるだけ長く使い続けたいです。(ネームは昔の持ち主さんの名前ですけど)
そういう希望をアッサリと叶えてくれる点が、モンブランのマイスターシュテュックが最高峰と呼ばれる所以でしょうか。
最近の活躍
私の高校時代の友人もそうですけど、最近は水性インク(ゲルインクやジェルインク)のボールペンだけを持ち歩く人が増えました。
先日は自治会館で署名する機会がありましたけど、署名用のボールペンを持っていない人が数名いました。
その時に活躍してくれたのが、このマイスターシュテュックのウルトラブラックです。
三重環の部分もウルトラブラックで、モンブランとは分かりにくいです。おまけに私はホワイトスターをクロマニキュアで塗り隠しているので、これがモンブランのマイスターシュテュックだと気付ける人は少ないです。
で、遠慮なく署名の場には、このウルトラブラックを供出したのでした。
「備えあれば憂いなし」というか、気軽に持ち歩きできるおかげで自治会館にも持参していたおかげで、ドタバタした騒ぎが生じるのを未然に防ぐことが出来ました。
なかなか地味なところで、けっこう活躍してくれるのが嬉しいです。
(今日も会議室へ筆記具の持参を忘れましたけど、胸ポケットのマイスターシュテュックのおかげで自席へ戻らず済みました。自席は2Fで会議室は珍しく6Fだったので、貴重な時間をロスせずに済みました)
まとめ
以上が最も多くの人にとって、最も快適に使えるボールペンがマイスターシュテュックの紹介でした。
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まさに万能選手と呼べる存在でしょうか。
そういえば先ほど、あまりマイスターシュテュックはジェットストリーム0.28mmには向いていないと説明しました。
このようなジェットストリームエッジを装着するボールペン軸には、自然と直角に近い角度で持ちたくなるカルティエ・ロードスターなどがオススメとなります。
ロードスターは約46gで、さすがにYシャツの胸ポケットには不似合いです。
こういう点で、やはり万能選手は使い勝手が良くて、大変に助かる存在です。
それでは今回は、この辺で。ではまた。
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記事作成:四葉静(ボールペンの魔術師)